鈴木勲、西川勲、上地gacha一也 Spiral Talk

鈴木勲、西川勲、上地gacha一也 Spiral Talk

Spiral Talk Notes / 相倉久人

リーダーに必要な資質のひとつは、いうまでもなく人を動かす力である。 たとえばクラシックのオーケストラが、本番にそなえて副指揮者の下でリハーサルをしている。そこへ後ろのドアーから当の指揮者が現われる。だれもそれに気づかない。なのにその瞬間とつぜん音が変わる。そういう奇跡をなんどか目にしたことがある。 もちろんジャズの世界にもそういうオーラの持ち主はいる。トランペットを手に客席に背を向けてバンドを挑発するマイルス、「私の楽器、それは私のオーケストラだ」と言い切ったエリントン。そのいわば作曲家的体質を顕著に引き継いでいるのがベースのチャーズ・ミンガスだ。ベースという楽器はジャズの流れの中で、名実ともに重要な役割を演じつづけてきた反面、素人向けには話題的に地味なところがあって、その反動だろうか、時折ミンガスのようなアクの強い存在が浮上してくることがある。そして日本には、同じベーシストの最長老として八面六臂の活躍をつづけている鈴木勲がいる。

 1933年東京生まれの78歳。半世紀以上前の米軍キャンプを皮切りに、63年の『幻の銀巴里セッション』を経て、70年に単身渡米してアート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズに参加。セロニアス・モンク,ウィントン・ケリー、チャールズ・ミンガス、ポール・デスモンド……と、枚挙にいとまのなほど多彩な相手と共演をくりかえした後、帰国して出した初リーダー・アルバム『Blow Up』(TBM)が、いきなり日本ジャズ賞。以下2009年のスイングジャーナル誌「南里文雄賞」、さらにはスイスのインターネット・ラジオ(Radio Jazz International)による「世界のジャズ・ミュージシャン20選」に名を連ねて「Jazz Godfather」の称号を得るにいたる、波乱と栄光の道筋については、詳しくは述べない。

 その彼が昨2010年梅雨明けの沖縄でレコーディングにのぞんだのは、その沖縄出身の2人のベーシストと組んでのベース・トリオである。

 1952年生まれの西川勲は高校を卒業後、尚美学園音楽大学進学、赤松憲樹にコントラバスを師事して帰沖。渡辺香津美、山下洋輔、辛島文雄らとの共演を経て、沖縄を代表するベーシストとして活躍している。

 もう一人の上地gocha一也は68年生まれ。ジャズ、ブルース、ロック、エレクトリカと広い領域にまたがって活動をつづける一方で、2005年に自身のバンド勢理客オーケストラを結成。那覇に近い浦添にあるGrooveというライヴ・スペースのオーナーとしても知られる。収録の前半は2010年6月18日、那覇の「てだこホール」で行なわれ、残りは月を跨いで7月1日にGrooveで行なわれた。

 西川と上地の楽器が通常のアコースティック・ベースなのに対して、鈴木が使っているのは、バロック時代のヨーロッパに源流を持つヴィオラ・ダ・ガンバに特注で手を加えた小型ベース。アンプを通して共振するその金属的で、そのくせどこか温かさがただよう音の響きと、出陣前の陣屋で弓弦を弾いているようなアコースティックなベース音が、前へ出たり引っ込んだりしながら、思いもかけない会話を繰り広げる。

 1曲目の「Overture」では、どれがだれの音だか判別がつきにくいが、2曲目の「My Romance」、3曲目の「月とボレロ」(take 2)と聴きすすむうちに、3者3様の筆使いの違いがはっきり浮かび出すと、つづく3曲はそれぞれの弾き癖をフィーチュアしたソロ・ナンバーという、心憎い仕組みになっている。

 そしてタイトル・ナンバーの「Spiral Talk」

では、らせん状のハガネの発条が規則的に回転しようとしながら、不規則に弾んでいる絵柄を想像して、思わずにっこり。相変わらずやってくれます

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